和雑誌特集ZoomUp 生活習慣病
| 1.はじめに
生活習慣病は以前成人病と呼称されていました。平成8年12月公衆衛生審議会成人病難病対策部会において、 生活習慣に着目した「生活習慣病」という概念を提唱しました。その定義は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒 等の生活習慣が、その発症および進行に関与する疾患群」であり、その内訳は糖尿病、肥満、高脂血症、高尿酸血 症、循環器病、高血圧症、大腸がん、肺がん、歯周病などが含まれます。成人病は、加齢に伴う病気と思われますが 病気の基礎は生活習慣にありますので、それを改めることによって病気を予防する事が可能です。 生活習慣病はお年寄りに多い病気ではありません。最近子供の肥満が問題視されています。 10歳頃の第2発育急進期の体重増加は一過性であり、後に解消されることが多いのですが、5〜7歳頃にすでに 肥満であった子供は、成人になってからも肥満が解消しにくい傾向があります。 最近当科でも10代の2型糖尿病と考える子供が2人も高血糖で入院していますし、20代以上で高血糖、糖尿病性 ケトーシスという重症患者が毎月緊急入院しているのが現状です。 2.死の四重奏と動脈硬化 糖尿病、高脂血症、高血圧の3つはサイレントキラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれ、自覚症状が出にくいため放置され ることが多く、動脈硬化の危険因子でもあります。さらに肥満が加わると「死の四重奏、シンドロームX」と呼ばれます。 動脈硬化とは、動脈にコレステロールなどの脂肪が沈着して、血管が狭くなり、血液の流れが悪くなり、動脈の壁が 弾力をなくして、もろくなった状態です。しかも自覚症状がありませんので、突然心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な 病気を引き起こします。このような患者様のご家族は、昨日までは元気だったのに、どうしてこんなことになってしまっ たのかと悔やまれる方がほとんどです。また、日本における高脂血症の患者数は2000万人以上、糖尿病の患者数 は日本で650万人いると推定されています。(しかし650万人のうち200万人しか病院を受診していません。) これほど多いと生活習慣病はもう他人事ではありません。 3.生活習慣病の自己チェック 生活習慣病と動脈硬化の危険因子(表1)を示します。比べてみると同じような因子があります。まず肥満度のチェック をしましょう。体格指数の計算方法(表2)を示しましたので、ご自分の体格指数を計算しましょう。 25を越えると肥満ですので危険因子が存在することになります。標準体重の測定方法も掲載しましたので参考に してください。 次に生活習慣病の中でも代表的な糖尿病のチェックをしましょう(表3)。 7項目のうち何項目が該当しますか? 合計点数が3点以上は要注意です。5点以上の方は病院で検査を受けることをお勧めします。点数が多い方は、 糖尿病のみならず生活習慣病の危険が高いからです。実は糖尿病の患者様は血糖だけが高い方は少ないのです。 高脂血症や高血圧、肥満のうちどれかを1つ以上持っている場合が多いのが現実です。しかも自覚症状がありません ので何年も放置しますと動脈硬化が生じてきます。 4.生活習慣病の予防方法 生活習慣病の治療費はどのくらいでしょうか? 軽い糖尿病の場合、月一回通院の内服治療ですと1年間約15万円 必要です。しかし、合併症検査費、他の治療費は含みませんので実際はより高額です。糖尿病性腎症により透析を 導入すると1年間で医療費は約500万円かかります。心筋梗塞の場合、カテーテル治療で入院費約150万円、外科 的バイパス術で入院費約250万円。脳卒中の場合、入院急性期1日約10万円。20日のリハビリ入院費約50万円前後 かかります。このようなことにならないために生活習慣病を予防または食い止める必要があります。 プレスローの7つの健康習慣と糖尿病克服のための5つのはかりを示します(表4)。 この中でも特に大切なのは 食習慣と体重です。300mg/dl以上の高血糖を示し、当院に入院される重症糖尿病の患者様の過半数が適正な食事 療法のみで血糖値が低下します。体重を1kg減量しただけで血糖値が下がることはよく経験します。 5.おわりに 高脂血症、糖尿病、高血圧は近年有効な薬剤が開発されています。しかし肥満を治す薬はないように、これらの薬剤 では生活習慣病は治りません。自分の健康を維持するのは薬剤ではなく、日常生活の中にあるのです。 |